天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大磯

大磯・旧吉田邸宅の丘

 一度は見学してみたいものと常々思っていた旧吉田茂邸が火事に遭った。麻生首相が幼い頃、祖父を訪ねて滞在した場所でもあるという。城山公園に行ったついでに、垣根越しに覗いてみた。驚いたことに庭の桜が満開で、焼けた残ったような建物はどこにも見えなかった。海側に廻って丘の上の銅像を眺めたら、悲しそうな表情をしていた。



      焼け跡の気配残さぬ桜かな


  みどりなす春の潮をとび出せる魚は朝日に輝きにけり
  ステッキをつきて佇む銅像はサンフランシスコの方を向きたり
  焼け跡に桜咲きたり大磯に昔を偲ぶ銅像のこる
  なかなかに魚とりがたし渚辺に前のめりなる一羽白鷺
  朝日さす川の渚は白鷺の魚を狙へる姿映せり
  ひさかたの光さやけき朝の日の川の水際を鷺はあゆめり
  亭々と山の上に立つ大木の梢にきざすミズキの若葉
  石段にあまた毛虫の這ふやうにキブシ花房散り敷きにけり