天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

棕櫚の花

藤沢新林公園にて

 花棕櫚とも。ヤシ科の常緑高木で、特に日本産のワジュロをいう。雌雄異株。五月頃葉の間から太い軸が出て、淡黄色の粟粒のような小さな花を多数つけ、穂状に垂れる。南国情緒のあふれる花である。


     梢より放つ後光やしゆろの花    蕪村
     村中にひよつと寺あり椶櫚の花   也有
     敷石や一丁つづく棕櫚の花     漱石
     棕櫚の花こぼれて掃くも五六日   虚子
     棕櫚の花港の風も忘れじよ     汀女


  里遠き門に車の音もなし昼寐の床に散る椶櫚の花
                    正岡子規
  きその宵雨過ぎしかば棕櫚の葉に散りてたまれる
  しゆろの樹の花           長塚 節


  夕されば棕梠の花ぶさ黄に光る公園の外に坐る琴弾者
                    北原白秋


  溜池の辺に誰が植ゑし棕櫚の木に人驚かす金色の房