天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

悼・塚本邦雄

 うかつだった。塚本邦雄が去る六月九日に逝去したことを昨日届いた『短歌研究』八月号を開くまで知らなかった。その記事「追悼・塚本邦雄特集(1)を、今日伊丹出張の途次の車中でむさぼり読んだ。
 彼の作品は、全部とは言わないが歌集、小説、評論など古本まで買って読んだ。一度だけだが、塚本邦雄を間近に見、講演を聴いたのは、平成十年の「平成の歌会」で九月六日、平安神宮における授賞式においてであった。彼の選に入った人に賞状を渡す際、すぐそばに立って彼をまぶしく見たのだが、吃驚したのは彼がど派手なラピスラズリの靴を履いていたことである。また、講演の際の関西弁の早口も大変印象深かった。なお、わが京都府知事賞は、道浦母都子永田和宏の選によるもので、残念ながら塚本邦雄選ではなかった。次に哀悼の歌を捧げる。


     今頃はラピスラズリの靴はきて歌論じゐむハライソの国


          早口にあつけにとられ青山河


 車中で作った他のうたは次の通り。


     「のぞみ」待つまなざし遠し掌に少し冷たき安曇野の水
     天照らす伊勢の国より朝廷へ顔料献ず雄黄の色
     (ポイズン・イエロウ)

    
          炎熱の大惨事跡電車過ぐ
          電車過ぐさまよへるもの炎天に
          青蔦やさまよへるもの手を伸ばし