天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大山紅葉

大山寺の紅葉

 どうしても大山寺の紅葉があきらめきれず、天気がよかったのでまた出かけた。いまがまさに見頃であった。八日まで紅葉まつりがあり、紅葉の夜間照明と国宝の鉄製不動明王がご開帳になっている。本堂に向って右の石段横に芭蕉の次の句の碑が立っている。

      雲折々人をやすむる月見哉

 (追伸)句意は、月見をしていると、時折雲が月を隠して、
    月見客にひと時の休みを与える、ということ。西行の歌を踏む
    というが、山家集には見当たらない。  

 実は出かける前に、今年のボジョレ・ヌーボーを一本冷蔵庫に入れて冷やしてきたのだが、肉と一緒の冷凍庫であったことに気づいた。電話をかけても誰も出ない。大山へはどんどん人や自動車が増えてくることもあって、早々に下山した。家に帰って冷蔵庫をみたらやんぬるかな、ぶどう酒がみぞれ状になり、中身が外ににじみ出ていた。氷化がすすむと体積が増えて中の空気が圧縮され、コルクの隙間から漏れたのであろう。


      大山川もみぢふぶける雲居橋
      紅葉狩ゆるゆる登る女坂
      錦秋の大山寺へ詣でけり
      黄葉の権化なりけり大銀杏


  女坂に七不思議ありその四には幹先太き逆さ菩提樹
  石段を踏みつつ鼓動たしかめぬ倶利伽羅堂の上の黄葉
  くろがねの不動明王現るる大山寺の紅葉まつりに
  ご開帳の言葉そぐはずくろがねの大山寺の不動明王
  くろがねの不動明王現はれて紅葉まつりをありがたくせり
  ぶどう酒の冷えを気にして駆け下る紅葉ふぶける大山の道
  登りくる人群なかを駆け下る大山寺のもみぢ見し後
  続々とバス、乗用車つめかくる大山寺の紅葉まつりに
  愛宕滝良弁滝の音聞きて師走二日の紅葉ちるなり
  黄金の光まとへる大銀杏師走の空に亭々と立つ
  相模野の空に尖れる大山の裾はもみぢの錦なりけり
  登り来し大山遠くかすみたり紅葉したたる思ひ出として