天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さくら紅葉

千鳥ヶ淵のさくら紅葉

 月が替わっていよいよ師走。靖国神社拝殿社頭の掲示も替わった。パンフレットの明治天皇の御製は次の歌である。

    あらし吹く 世にも動くな 人ごころ
    いはほにねざす 松のごとくに



 今月の遺書の主は、昭和十九年に南洋群島方面で戦死した二十一歳の青年である。


  音たてて桜もみぢの散りにけり斎庭に読みし今月の遺書
  父母に「愈々出撃します」とぞ海軍上等飛行兵曹
  アルバムに貼ること願ふ遺書なりき二十一歳の飛行兵曹
  をさな等に送る菓子なきことを詫ぶ遺書の終りのサヨナラ
  の文字


  戦争に盆正月はなかりけり一月三日南洋に散る


     参道を禮して過ぎる紅葉かな
     日の丸の風に散り交ふ銀杏かな


  あからひく日に照り翳り散りゆけり千鳥ヶ淵のさくら紅葉は