天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

藤の花

藤の花

 鎌倉では、もう藤の花が咲き始めた。マメ科の蔓性落葉木。山野に自生するヤマフジと観賞用の園芸品種がある。ヤマフジは花房が短い。蝶形の花を長く総状にたくさんつけるのは野田藤。この名は、豊臣秀吉大阪府野田の藤を愛でたことに由来するという。藤の名所はいくつもあるが、埼玉県春日部市の「牛島の藤」は国の特別天然記念物。東京亀戸天神の藤も有名。


      くたびれて宿借るころや藤の花     芭蕉
      大岩に錨なげけり藤見船      村上鬼城
      藤の房吹かるるほどになりにけり  三橋鷹女


  藤波の影なす海の底清み沈著く石をも珠とわが見る  万葉集
  ぬるるさへ嬉しかりけり春雨に色ます藤のしづくとおもへば
                      金葉集 源 顕仲
  やまがはの崖のこの面に咲きなびき幾くだりなる藤のむらさき
                        前川佐美雄


 万葉集では、山吹以上によく詠まれており、ざっと数えても28首くらいはある。


      門前の鯵干す店や藤の花