天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

水木

花水木(上:白、下:ピンク)

 街路樹の水木に花が咲き始めた。この名の由来は、早春、芽をふく時、地中から多量の水を吸い上げるところにある。花水木というときは、北米原産のドッグウッドをさし、別名アメリヤマボウシとも。明治の末に東京市長であった尾崎行雄が、米国に日本の桜の苗木を贈った返礼として、東京市に贈られた。これにハナミズキという和名をつけて日比谷公園に植えたのが初めである。よってアメリハナミズキという言い方は間違い。白い花とうす桃色の花がある。なお、ヤマボウシも日本の山地に自生するミズキ科の落葉高木である。
 水木を詠んだ秀歌といえば、次の歌。


  青春はみづきの下をかよふ風あるいは遠い線路のかがやき
                      高野公彦

昭和三十九年七月十二日の朝日歌壇、宮柊二選に入った作品である。その一ヶ月後、高野は宮から誘いを受けて、コスモス短歌会に入った。東京教育大学の学生で二十三歳の時である。
 高野公彦の歌の特徴については、日を改めて論じることにしよう。


  ひからびて芥子粒ほどの実を残す柘榴はあかき若葉萌えたり
  釣針をのみて死にたる鳥あれば塀を立てたり水鳥の池
  赤き白き帽子あそべる校庭の隅にうすべに花水木咲く
  凶弾に流れし血潮見し朝にあはれアメリヤマボウシ咲く