天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

卯の花

左:空木 右:谷空木

 卯の花は、ユキノシタ科落葉低木の空木に咲く白い花である。空木の名称は、枝が中空であるところに由来する。歳時記の傍題には、空木の花、花うつぎ、山うつぎ、姫うつぎ、卯の花垣などがある。
 箱根仙石原の湿性花園では、谷空木を見た。谷空木は、スイカズラ科のハコネウツギのことであるが、初め白色で次第に紅紫色に変化する花を多数開く。空木と谷空木は別種類なのだ。
 卯の花は、古典和歌にもなじみ深く、万葉集には二十四首も詠まれている。ほととぎすと共に夏を代表する景物であった。


      卯の花のいぶせき門と答へけり    高浜虚子
      谷ゆけば硫黄こぼるる花空木     秋元不死男


  鶯の通ふ垣根の卯の花のう厭き事あれや君が来まさぬ
                  万葉集 作者未詳
  ほととぎす空に声して卯の花の垣ねもしろく月ぞ出でぬる
                  玉葉集 永福門院