中原中也の詩集「山羊の歌」を読み終えた。中也生前の唯一の出版物である。母から当時の金で300円を貰って出版を試みるも資金不足になり、中断したが、死の直前にやっと日の目を見た。それはともかく、詩は文芸の極致であると感じた。つまり言葉・言霊の働きをどう生かすかに苦心惨憺する。読者に感動なり衝撃を与える工夫が先ず必要。
例えば、
1.リフレイン
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪が降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
2.常識外の助詞の使い方
涙も出なかった。鼻血も出た。
3.語順の逆転
うつらうつらと僕はする
4.コラージュ
象の目玉の、
汽笛鳴る。
5.ダダイズム:言葉の意味を無視して音を重視する、言語破壊を
試みる。
私の過去の環境が、私に強請した誤れる持物は、
釈放さるべきアルコールの朝の海を昨日得ている。
6. 隠喩
おれ程おまへもおもちやが見えたら
おまへもおもちやで遊ぶに決まってゐるのだから
文句なぞを云ふなよ
こうした技法を細かくフォローして理解しておかないと中也のどこが新しいのかわからない。普通に読むとさっぱりわからない言葉の並びになり、詩人のひとりよがりに付き合わされて、馬鹿馬鹿しくなる。