天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

都忘れ

鎌倉・長谷にて。

 キク科の宿根草で植物名はノシュンギク。深山嫁菜を観賞用に栽培したものという。
このもの悲しい名前は、承久の変で佐渡に流された順徳上皇が配所で詠んだと伝わる歌


   いかにして契りおきけむ白菊を都忘れと
   名づくるも憂し


に由来するという。が、この歌では、白菊を都忘れと名づける云々といっているので、右のような現代の花とは種類が違っていたであろう。


  名を問へば吾妻菊ちふむらさきと白と咲きたる鉢の植込
                   伊藤左千夫
  山に来て都忘れの花を見ぬ遠き痛みにかよふ花の名
                   田谷 鋭
 

  誰がつけしかなしき名前鎌倉の谷戸に花咲く都忘れは
  鎌倉の谷戸に咲きたるむらさきの都忘れをかなしむなゆめ