椿
ツバキ科の常緑高木。わが国の自生種には海岸に分布するヤブツバキ、積雪地帯の山中に生えるユキツバキ、屋久島に生えるリンゴツバキなど3系統がある。現在は園芸品種が圧倒的に多い。園芸品種は室町時代に基礎が作られたという。「椿」という漢字はなく、国字である。春の事ぶれの花を意味してわが国で発明された字なのだ。
笠へぽつとり椿だつた 種田山頭火
赤い椿白い椿と落ちにけり 河東碧梧桐
椿咲き日輪海の上わたる 岸 風三楼
あしひきの八峰(やつを)の椿つらつらに見とも飽かめや
植ゑてける君 万葉集・大伴家持
山川のみ冬の瀞に影ひたす椿は厚し花ごもちつつ
北原白秋
つくろはぬ垣根に低く咲くいのち冬くれないの椿こよなし
坪野哲久
はやち風ふきすぐるたびいそのかみ古木のつばきあかあか
として 玉城 徹
風音のとよみしづまる椿の森こずゑの花は日に乾き咲く
岡野弘彦
たまきはる内の光を明かすごとひらく椿の花のしろたへ
尾崎左永子
心臓のあたりつめたき水深ありつばき花咲く坂をのぼりて
小池 光
つねにつよき心に君は恋ひたくて白玉椿つらつらに見き
米川千嘉子