天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

神武寺の山桜

神武寺にて

 小雨の降る中、東逗子にある天台宗神武寺に山桜を見に行った。山路に数本立っているにすぎないが、一度見たときから忘れられない。手近な山桜といえば、先ずここを思ってしまうのである。
 山桜は、バラ科サクラ属の落葉高木で日本の野生の桜の代表。葉芽と花が同時に開くので分かりやすい。神武寺の桜には大島桜もあるようだ。千葉県から静岡県にかけて分布する野生種で、特に伊豆大島に多いのでこの名前がつけられた。これも葉と同時に花が咲く。


      雨空にまぎれて淋し山桜
      萌えいづる葉のうす朱き山ざくら
      山門に地蔵と濡るる桜かな
      神武寺に雨だれを聞くさくらかな
      晩鐘の空を惜しめり山桜

      
  頂に大き観音をはします山の端白きもくれんの花
  お地蔵の赤き頭巾の上に咲く白けがれなき山さくら花
  実朝も参詣せしと伝へたり山桜咲くここ薬師堂
  夏さればうす赤き実に変はるべし白く咲きたる木苺の花
  うつむきて桜の下をわが帰る雨の山路のあやふかりけり