天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蛍を見に行く

岡崎市の山里にて

 岡崎市の山里に蛍を行った。自然の蛍を見るのは、小学生の頃以来ではなかろうか。土曜日ともあって、大変な数の車が出ていた。とても駐車できる場所など見つかりそうも無い。あきらめて帰ろうと山里を突き抜けるべく進むと、車が見当たらない場所に来た。そのとき左手の林に淡い光の筋が数本見えた。蛍だった。車を降りて野川のそばに行き、夢幻の世界をしばし堪能した。


      指先の蛍に点る故郷かな


  街を抜け山峡に入る野道には蛍見物の車満ちたり
  あまりにも多き車にあやぶめり土曜の夜の蛍見物
  やうやくに車とぎれし山峡にかそけき光ゆらぎ飛ぶ見ゆ
  路の辺に車をとめて下りたればまなかひに見ゆ蛍の明り
  新月の野川の橋にわが立てばあかりを引きて蛍出でたり
  ゆらぎ出づる誰が魂と思へれば涙ぐましも蛍のあかり
  草むらに小さき灯りを点せるを蛍と知りてわが手に掬ふ
  ほうたるの幼虫ならむ指にある明りを吹けば飛ばず地に落つ
  遠近に蛍の明り尾を引けば立ち去りがたき山里の川
  山峡を抜けて帰らむ次々に蛍見物の車のぼり来