天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初秋の吾妻山

二宮町吾妻山にて

 八月も終りになると、さすがに日差にも秋の気配が漂う。空気が乾燥してきているせいもあろう。駅を過ぎる貨物列車に線路沿いのえのころ草が戦ぐ風景も秋である。いつもの散策コースだが、吾妻山に登る前に、二宮海岸に坐って釣りの様子をぼんやり見ていた。江ノ島とは違って、まったく釣れていなかった。吾妻山山頂はコスモスの花が満開である。また全山蝉しぐれであるが、特にミンミン蝉とつくつく法師の声が耳につく。

     風やむと炎暑の鉄路ゆがみけり
     直立の草のかなたの雲の峰
     えのころの戦ぐ鉄路の車輪かな
     空蝉を葉裏にのこし飛び去りぬ
     蝉声に揺れるがごとく吾妻山
     日盛りの鉢に萎(しを)れしプチトマト


  空蝉をいくつ残して逝きにけむ歌集あまたの塚本邦雄
  鳴くほどに桜の幹をせりあがる尻震はせてつくつく法師
  その姿見まがふほどに相似たりミンミン蝉とつくつく法師
  山頂に榎の立てる吾妻山春は菜の花秋はコスモス
  初春に見しコスモスの花なれど秋にふたたび見る吾妻山
  賀陽宮お手植の松」すでに無し大正七年の碑(いしぶみ)のこる
  味噌に入れた塩はよそへは行かぬといふまめ知識ありちゃたん
  の塩に