天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

晩秋の湘南平

湘南平頂上から見る富士

 雨の日が続いて山野をあるくことが出来なかったので、久しぶりに湘南平を縦走したら、足ががくがくになってしまった。縦走といっても二時間ばかり歩いたにすぎないが。なお、以下の句の「静の草屋」とは、島崎藤村旧居のこと。


     主なき静の草屋の秋ともし
     秋の日の静の草屋を開け放つ
     甲斐側に冠雪かぶく富士の峰
     秋ふかみ潮の目しるき相模灘
     園児らがあそぶ紅葉の湘南平
     新蕎麦の手打ちあきなふ水車かな
     おしろいや松のしづくの化粧坂
     猪のぬた場ともなる地獄沢


  ヤマガラのちひさき影がとびうつる秋の朝(あした)の木洩れ
  陽の中


  甲斐側にかたよりて見ゆ霜月の朝にかがよふ富士の冠雪
  山裾に掘りたる池の秋ふかみ金魚の鰭は垂れてうごかず
  虎御前(ごぜ)の化粧(けはひ)の井戸の残りたる街道わきに
  おしろいの花


  庭隅に香の菓(かぐのこのみ)のかがやきてわが目を奪ふ秋
  ふかみかも