天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さくら紅葉

藤沢市境川堰堤にて

 さくらと言えば、春爛漫の花を愛でるのが通常だが、桜並木が一斉に紅葉する景色も情緒があってよいのものである。顔や首筋に風の冷たい朝、路上を転がる紅葉のむれ。それらが集まってきてできた吹き溜まり。夕陽に輝いて舞い散る紅葉。一枚一枚を良く見れば、大方は虫食いの跡やまだらのしみがある。それがまた一抹の淋しさを誘う。滅びを象徴していると見るのは、日本人の美意識か。花の場合と同様に桜紅葉が散るのも早い。


  紅葉せる桜の大樹影ふかくくれなゐの葉はその影に落つ
                   影山一男
  吹かれつつ坂あがり来るひとひらの桜紅葉を擦れちがいたり
                   落合けい子


     饒舌にさくら紅葉の並木道


  しののめの薄きあかりにしづもれるさくら紅葉の並木道見ゆ
  この年も残り少なくなりにけりさくらもみぢの並木道ゆく