天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大山寺の紅葉

大山寺にて

 晩秋初冬の紅葉の名所は、全国各地にあるが、神奈川県下では、大山の中腹にある大山寺をあげることができる。参道の石段両側に立つ数本の木々が、枝をひろげて深紅の葉をつけているにすぎないが、空を覆う密度が高いのである。毎年、紅葉の時期になると、いつ行こうかと天候を気にしている。今年もなんとか晴れの日に訪ねることができた。


     明王の炎とまがふ紅葉かな
     滝水ともみぢ交はり落ちにけり
     大山の雲立つ下の紅葉かな
     つるべ式ケーブルカーに紅葉狩
     大山の紅葉に染まる鉄路かな
     木漏れ日にただよひゆけり雪蛍
     朱の橋のかかれる紅葉谷なりき
     鳩の群翔ちて銀杏の落葉舞ふ


  参道の石段脇にならび立つ黒き地蔵をもみぢ照らせり
  炎立つ紅葉の山にしづもれる不動明王くろがねにして


[参考] 大山寺は、良弁僧正が天平勝宝七年(七五五)に開山した。
    中世の火災や明治初年の廃仏毀釈運動により、何度か全滅に
    近い災害に遭っている。