天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ワーグマンの幕末明治

神奈川県立歴史博物館前にて

 神奈川県立歴史博物館は、旧横浜正金銀行本店の趣ある建造物である。ここで6月11日から7月31日まで、「ワーグマンが見た海」と題した特別展が開催された。
 幕末から明治にかけて、欧米から新聞記者、軍人、技術者、教授などが多数、日本にやってきた。チャールズ・ワーグマンは、1832年生れの英国人。1857年に「イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ」の特派記者兼挿絵画家として中国そして日本へ派遣された。「ポンチ絵」のもととなった日本最初の漫画雑誌『ジャパン・パンチ』を創刊した。膨大な数の絵を描いたが、五十九歳にして横浜で亡くなった。横浜外国人墓地に葬られている。なお妻子(カネと一郎)の墓は横浜善行寺にあるらしい。
 三十年ほど後の同業者にフランス人画家ジョルジュ・ビゴーがいる。ビゴーは漫画・風刺画で有名。


  日本人カネを娶りて一子なすワーグマン氏は英国紙特派員
  くつろぎて障子戸を背に立つ女ワーグマン氏のカネといふ妻
  鎌倉の幕府のすがた影もなし明治初年の若宮大路
  乗馬用鞭をかざせる外人に太刀、拳銃を向けるもののふ
  暗殺の危険はあれど日本の風俗描きて故国へ送る
  描きたるは明治六年江之島へ干潟をわたる人のいくたり
  江之島の右手に富士の見ゆる絵は七里ケ浜に描きしものらし
  海岸に坐りて描けば寄りきたり絵を覗きこむ日本の民は
  品川にワーグマン氏が描きたる大名行列明治十年
  整然と並びて立てる兵と民斬首の前の刑場のさま
  騎馬にして大名行列を横切るは無礼と知らず切殺されし
  日本人二人の弟子が習得すワーグマン氏のスケッチ技法
  晩年は精神を病み横浜に五十九年の生涯を閉づ
  妻子とは離れて眠る英国人ワーグマン氏は外人墓地に