天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

水仙

二宮町吾妻山にて

 広義にはヒガンバナ科スイセン属の植物の総称。スイセンをはじめ約30種ある。いわゆる水仙は、関東から九州の海岸近くにはえるが、自生ではなく、古く中国から渡ってきたとされる。地中海沿岸が原産。ラッパズイセン、キズイセン、クチベニズイセンなど。以下には、江戸中期の俳人与謝蕪村と現代の俳人・川崎展宏の作品を4句ずつあげておく。


     水仙や美人かうべをいたむらし     蕪村
     水仙に狐あそぶや宵月夜
     水仙や花やが宿の持仏堂
     水仙や寒き都のここかしこ


     波たてて水仙園に船寄り来     川崎展宏
     水仙の花立てて出る花屋より
     水仙の荷がいま着きし小商
     一束やふくらむ葉さき水仙


短歌に詠まれた例もあげておく。

  立春水仙の花たましひに及べる水とひとに告げむか
                   山中智恵子
  水仙のうつむき加減やさしくてふるさとふいに思う一月
                   俵 万智
  水仙のおとろへぬ香に顔を寄せ欲りするものを與へられゐる
                   窪田章一郎
  水仙の香りがすいと立ち上がる例へばそんな人だあなたは
                   矢部雅之
  今日こそは喇叭吹かむと黄水仙凛と構えて頬ふくらます
                   水島雅子