天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

しらかし

南足柄丸太の森にて

 ブナ科の常緑高木。高さは9メートル、直径は60センチ以上にもなる。秋には団栗ができる。材は固く、器具や薪炭用に使われる。漢字で白橿、白樫と表記する。


  あしひきの山道(やまぢ)も知らず白橿の枝もとををに
  雪の降れれば        万葉集・柿本人麿歌集


  紅葉ちる秋のやまべはしらかしの下ばかりこそ道は
  見えけれ           後拾遺集・法印清成


  しらかしの露おく山も道しあれば枝にも葉にも月ぞ
  ともなふ           拾遺愚草・藤原定家


  山ふかみ春ともいまだしらかしの枝たる雪ぞ消がてにする
                   頓阿句題百首
  春の色の外山はいはじしらかしの枝にも見えて雪ぞ残らぬ
               新明題和歌集・中院通村
  夏の夜も涼しかりけりしらかしの若葉の露にやどる月影
                 亮々遺稿・木下幸文