天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

早春賦(4)

湯河原幕山梅林にて

 梅にせよ桜にせよ花の名所なら、開花情報はインターネットで調べることができる。ただ、毎日の情況が掲載されているわけではない。それで適当にみはからって出かけるのだが、早すぎることが多い。三寒四温というくらい、この時期は日々の気温変化が激しいので予想も難しい。
 横須賀の田浦梅林に行ったが、5分咲きでがっかり。小田急新松田駅から徒歩で松田山の河津桜を見に行ったが、ここもまだ咲き始めたばかり。湯河原梅林に行ってやっと満開の状態に出会えた。自動車で乗り付ける人が多くて、道路には延々と車が連なっていた。これでは梅林に辿りつくのに一、二時間待つことになるのではないか?私は午前中早めにバスで出かけて、さっさと帰ったので渋滞に遭わなくて済んだ。


     紅梅の林より見る横須賀線
     屋根瓦青きが梅の花の間に
     笹鳴が梢を移る日向かな
     春一番PM2.5を憂ふ
     啓蟄の箱根に地震の止まざりき
     鵯が目白追いだす桜かな
     里山の初音に忘る杉花粉
     海豹の鬚に霧氷や十勝川
     岩壁にふたり張り付く梅の花
     梅林を仰ぎて浸る足湯かな
     登り来て見渡す梅の花の宴
     紅白の雲たなびけり梅の花
     わがひとり終へる今年の探梅行
     帰り来よ津波跡地に鯉幟


  啓蟄の日をよろこびて夕食は笹掻き牛蒡の炊き込みご飯
  菜の花も河津桜もこれからが見ごろなるべし祭は終る
  この年の梅も桜も遅れ咲く延長なるか各地の祭り
  五分咲きの河津桜の間に見ゆ雲たなびける雪嶺の富士
  菜の花と河津桜の中腹に客待ち顔の出店がならぶ
  幕山のふもとの梅を見むと来しバス、乗用車道につらなる
  川の辺の足湯に浸り見上ぐれば雲とたなびく紅白の梅
  幕山のふもとに咲ける紅白の梅は雲なしうねり棚びく
  冬枯れの山のふもとに赤き白き咲きて匂へる梅林の花
  足元の瓦礫、階段気にしつつたどる湯河原梅林の道
  梅林の山揺るがせる轟音は富士山麓の演習と知る
  老人がカメラ構へて動かざり梅見の客を路にとどめて
  咲き満てる梅の林を下にして岩壁のぼる男女一組
  梅林の最高地点にわが立てば眼下になだる紅白の花
  足早に梅の林を経巡りて今年終りの花を愛でたり
  駐車場に入らむとならぶ乗用車梅林までは近くて遠き
  梅林を後にし下りる道の辺は農家の売れる蜜柑、八朔