天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

運河(3)

横浜にて

 歴史上有名な運河として、エジプトの「ファラオの運河」、中国の「隋の煬帝の大運河」などがある。運河の掘削がもっとも盛んであったのは、産業革命前後であった。パナマ運河スエズ運河がそうであった。


  大運河に沿ひつつ夜行すわが少年の父の受弾地は黒きふくらみ
                       森岡貞香
  朽ち色の跳ね橋かかる小運河ただよふ絮(わた)の澱(よどみ)
  に浮かぶ                 千代國一


  草枯れし運河の岸に牛を追ふ少年は鞭をしなやかに振る
                       高橋宗伸
  みどりの藻人の眸にもつれしめ運河に淡き腐臭たちのぼる
                       葛原妙子
  薔薇(ばら)酒(しゆ)すこし飲みたるわれに大運河小運河の
  脈絡暗し                 葛原妙子


  しんかんとしたる晩夏の運河にて廃油かがやくこの午後の時
                       鵜飼康東
  夜の運河なめらかにしてそこに水ありと知らるるほどの明るさ
                       尾崎左永子