天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鯉(2)

浜松市の公園にて

 観賞用の錦鯉は、イロゴイ、ハナゴイなどとも呼ばれ、マゴイの突然変異種を基調にして、新潟県山古志地方で育種改良されたもの。ドイツゴイは鱗を著しく少なくしたもので、肉が多く、成長が早い。


  池水に病(やま)ふ緋鯉の死ぬときは音立てて跳ねてただち
  息停(いきと)む            北原白秋


  鯉こくにあらひにあきて焼かせたる鯉の味噌焼うまかりにけり
                     若山牧水
  思ほえぬこころのゆらぎ昼食ののちひと袋鯉ゑさを買ふ
                     山本友一
  池水の澄むひとところ近づけば胸びれをさめ緋の鯉の群
                     中野菊夫
  向き変ふる鯉は尾びれにしなやかに力こめたり立つ水けむり
                     伊藤雅子
  水際なるわたしは薄い影のやう鯉らまつすぐに口あけて来る
                     河野裕子
  神田川のにごりの底を進みゆく緋鯉の群れの数かぎりなく
                     大島史洋