爪(1)
学問的に爪を定義すると、有羊膜類の指の先端の背面にある表皮の角質が変化し硬化して出来た板状の皮膚の付属器官 ということになる。哺乳類では種によって特化しているが、もともとは鱗から派生したという。人間の場合、爪の下部には毛細血管が集中しているので、爪は血液の健康状態を知る目安にもなる。
爪を嵌む。「何の曲をか弾き給ふ。」「あらず汝が目を引き
掻かむとす」 森欧外
ぢつとして、蜜柑のつゆに染まりたる爪を見つむる心もとなさ
石川啄木
酸漿の赤き袋のぬれそぼつ庭ひえびえし爪切りをれば
結城哀草果
みづからの意志にあらぬを爪のびて汚しと歎き憤りゐぬ
前川佐美雄
光れるは爪と毛髪 露台にて薄き毛布をわれは纏へり
葛原妙子