天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

壁(2)

NHKテレビ「歴史秘話ヒストリア」から

 壁には建物を支える構造体となっているものと、そうでないものがある。前者は「耐力壁」、後者は「帳壁」「非耐力壁」と呼ばれる。外壁が石壁・レンガ壁などでできている西欧の伝統的な建築物の壁が耐力壁であった。日本の木造住宅の壁が典型的な非耐力壁である。


  壁にむきひとりパン食(は)む 駅ビルに秋をそよがぬ
  タイルの桔梗            石井照子


  釘の頭(づ)を打ちてこぼしし壁砂のかそかなる音畳に
  とどく               中地俊夫


  ハンガーに掛け置くゆかたわれよりも肩いからしてゐて
  夜の壁               吉野昌夫


  垂直にたちて校舎の壁の夜拒みこばまるというとも彼ら
                    武川忠一
  六号室を出てゆく朝に一枚の地図が耀く南の壁に
                    穂村 弘
  マネキンをはだかにしたる青年がふともいまはの壁の中
  に消ゆ               小池 光