天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

波の歌(1)

北斎の絵から

 波には、水面に起きるもの、地面を伝わるもの(地震波)、電磁波などの物理現象から、藤波、稲の波といった比喩的なものまで、様々ある。今回の一連でとり上げる波は、水面の波を主体とする。
それは風や振動などによって水面に生じる上下運動。また、その運動が次々に周辺に伝わっていく現象として定義される。


  大海の水底とよみ立つ浪の寄らむと思へる磯のさやけさ
                 万葉集・作者未詳
  うつせみの命を惜しみ浪にぬれ伊良虞(いらご)の島の
  玉藻刈りをす          万葉集・麻続王


  沖つ波辺波(へなみ)立つともわが背子(せこ)がみ船の
  泊り波立ためやも       万葉集・石川大夫


  もののふの八十宇治川網代木にいさよふ波の行く方
  知らずも          万葉集柿本人麻呂


  谷風にとくる氷のひまごとにうち出づる浪や春のはつ花
                 古今集・源 当純
  わたの原よせくる波のしばしばも見まくのほしき玉津島かも
                古今集・読人しらず
  わたつみのかざしにさせる白妙のなみもてゆへるあはぢ島山
                古今集・読人しらず