うなぎ(1)
ウナギ科の魚。各地の河川に分布。特に本州中部以南の太平洋岸に多い。日本うなぎの産卵場は太平洋の沖合といわれる。稚魚のシラスウナギは、2月から5月にかけて、群れをなして川を上る。そこで8年ほどかけて成熟し、産卵のため海にくだる。肉は脂肪とビタミンAに富む。周知のように、日本うなぎは絶滅危惧種に指定されている。俳句では夏の季語。
荒涼と荒川鰻裂いて貰ふ 細見綾子
宗右衛門町の裏見て鰻食ふ 浦野芳南
あかつきの湯町を帰る鰻捕り 飯田龍太
石麻呂にわれ物申す夏痩(なつやせ)に良しといふ物ぞ
鰻(むなぎ)取り食(め)せ 万葉集・大伴家持
ひと老いて何のいのりぞ鰻すらあぶら濃過(こす)ぐと
言はむとぞする 斎藤茂吉
砂浜にくされし如き水流れ白き鰻の子やや上流に上れる
もあり 土屋文明
茂吉忌はうなぎを食べてひたすらに活力を得む鬼となるまで
藤岡武雄
昨夜(よべ)の鰻完全に消化しつくされて吾は眼を開く
薄明の中 植松寿樹
背すぢより鰻さかるる日盛りに汽車すれちがふ鋭きひびき
村野次郎
首の根に錐をうちこみ一息に生きたる鰻を引き裂きにけり
石黒清介