天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花狂い(2)

小田原城にて

 よく確かめもしないで人づてに聞いただけで小田原城の桜を見に行った。天気予報では、晴れのはずだが、曇ってしまった。天守閣の下辺、本丸の反対側の遊園地あたりの桜は、咲き始めていて、遠くからは紅の雲のように見えた。シーツを敷いて三分咲きの桜の木の下で酒を飲み始めた工事関係者らしき五、六人がいたが、なんとも寒々しい。満開の晴れた日には、素晴らしい場所なのだが。
 報徳二宮神社には一樹だけ八分咲きの桜があった。そこをぬけて西海子小路まで足を伸ばしたのだが、花はほとんど咲いておらずがっかり。白秋童謡館の庭で少し休んでから、小田原城に引き返した。濠の周辺の桜も見頃には遠かった。


     庭せばめ白木蓮と紫木蓮
     くれなゐの雲はさくらのつぼみかな
     黒松の長寿を祝ふ桜かな
     さくらまだ莟に散るは幤辛夷
     天守閣さくらつぼみの雲の上


  小田原城 駅より見れば雲なせる花はつぼみのうすくれなゐに
  咲き初めし桜根方にシート敷き酒酌み交す倭人といふは


[注]小田原城の桜は、今日は満開であろう。ただ天気が悪い。