天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

浦賀

浦賀

         雛罌粟や実技試験の視野に入る
         はつ夏の風は潮の香燈明堂
         裏山に藤の花垂る燈明堂
         釣り人の陸軍桟橋初夏の風


    黒船の浮かびし沖にタンカーの喫水深く白波たてり
    トベラ咲く垣根の奥にしづもれる横須賀刑務所ならびに官舎
    防衛庁第五研究部の横に久里浜少年院はありたり
    機雷術学びし二万七千人任地に行きて八千が死す
    乗る時はベルを押せとふ貼紙の客を待ちゐる浦賀の渡し
    海の辺の浦賀奉行所処刑場跡に薫れる山藤の花
    首切場跡の地蔵に刻まれし「天保十年」「即身成仏」
    重機錆び建屋ふりたり千隻の艦船造りし浦賀ドックは
    江戸の世の建屋配置を絵に描きて路傍に示す船番所
    入り鉄砲出女ありや船番所跡に想へる入船出船
    潮風のよすがに偲ぶ水兵をあまた育てし浦賀屯営