天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

短歌人東京歌会

 今回の場所は上野駅前にある東京文化会館、午後一時からなのでそれまでの数時間を上野公園内で過ごす。


          ベルリンの至宝展
  大理石クレオパトラのたばねたる髪に残れるはつかむらさき
  上唇すこし薄きが気にかかるクレオパトラ七世頭部
  皇帝の忘れ得ざりし青年を彫りて残せり黒大理石
  神殿の壁は赤色花崗岩手を縛られし捕虜のレリーフ
  増税と悪貨にインフレ招きけるカラカラ帝の鬚面親し
  ラファエロの個性は色にありけりと聖母子の絵をつくづく見たり
  たくましき肢体に立てるポセイドン手触れてみたき白大理石
  青銅の棺の継ぎ目見当たらず猫のミイラを納めしといふ
  ヒエログリフの供養碑(ステラ)に描けりラー神にワイン捧ぐる
  アメンエムハト


           公園散策
  鳥塚と包丁塚の並び立つ料亭多き上野しのばず
  タンポポの絮吹き飛ばすをさな児の口を吸ひたし新緑の木々
  腰細きをみなの後をくぐりけり花園稲荷神社の鳥居
        緑陰や似顔絵描きの客待てる


           歌会
 今日のために投稿したわが短歌は、

  『明暗』も『こころ』もここに書きけると今に光れる紫檀の机

 好評なるも、作品名としては『こゝろ』が正しいこと、「書きける」ではなく「書きけり」の方が文法的にも良い(蒔田さくら子)、といった指摘があった。結果として

  『明暗』も『こゝろ』もここに書きけりと今に光れる紫檀の机
ということになる。なお、蒔田さくら子が指摘した他の歌で納得したものを次に挙げる。

  奉納太鼓高く低くとよもすを一天の下踏ん張りて聴く 川田由布
        ↓
  高く低く奉納太鼓とよもすを一天の下踏ん張りて聴く


  蕗の葉に泥つきしまま手づかみの春を新聞紙に包みあり 川井怜子
        ↓
  蕗の葉に泥つきしまま手づかみの春を新聞紙に包み送り来


また、テレビのニュース映像を見ての詠草であろうとして、批判的な意見が多かった歌として、

  神の手にゆだねしいのち三匹の仔犬の瞳にうつる星空    
  幾人の惛き心を捉えしやグリーンベレーのそのふかき緑