天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

横須賀 −日本海海戦百周年ー

自衛艦

       薔薇にほふ潜水艦の旭日旗
       横須賀や薔薇のむかうに自衛艦
       横須賀や薔薇の香かげる鉤つ鼻
       ひるがへるZ旗まぶし五月尽


   皇国の興廃かけし一戦の跡なつかしき
   「三笠」甲板

   まぶしみて風のマストにひるがへるZ旗見上ぐ「三笠」甲板
   荒海にサバニを漕ぎて報せける漁師五人に胸あつくする
   金箔の剥げすざまじき菊花紋かつて光りし「三笠」の艦首
   力みたる「雄飛五大洲」の書 英国留学二十六歳のとき
   揮毫には御製もありき東郷のすめごり思ふ心篤しも
   寂滅の姿なりけり晩年の東郷平八郎の花押は
   東郷の遺墨あまたを見てあれば揮毫も彼の仕事なりけり
   身をよぢるごとき墨痕「我何の顔(かんばせ)あつて父
   (ふ)老(ろう)を看ん」と

   「禍福眼前事是非身後名」 陸軍大将・秋山好古
   「山静似太古日長如小年」 海軍中将・秋山真之
   滄海に鯨を制すと比喩したり海軍大臣山本権兵衛
   建国の熱きこころを書に残す気はづかしくも見つむる我は
   遺墨展カタログひろげ潮風の戦艦「三笠」の甲板に座す
   日本海海戦記念に贈られし被弾鉄板雪見燈籠
   線細き防衛大の儀仗隊技はそろへど実戦やいかに
   焼きそばに焼酎くめり戦友の五人が集ふ三笠公園
   観客はまばらなれども唄ひをり赤きドレスの早風美里
   動かざる「三笠」を横に歌ひゐる赤きドレスの演歌さみしき
   次々に写真撮る人現るる東郷元帥銅像の前
   敬礼に応ふる術を知らざれば頭を下げて入る自衛艦
   ふるさとの地名つけたる戦艦を失ひしとき国敗れたり