天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小池 光

 「短歌人」八月号、小池光選に、5月29日に作った歌の中から次の八首が
入った。

            日本海海戦百周年
   見上ぐれば風のマストにひるがへるZ旗まぶし「三笠」甲板
   金箔の剥げすざまじき菊花紋かつて光りし「三笠」の艦首
   身をよぢるごとき墨痕「我何の顔(かんばせ)あつて父(ふ)老(ろう)
   を看ん」と


   「山静似太古日長如小年」 海軍中将・秋山真之
   滄海に鯨を制すと比喩したり海軍大臣山本権兵衛
   建国の熱きこころを書に残す気はづかしくも見つむる我は
   動かざる「三笠」を横に唄ひをり赤きドレスの早風美里
   ふるさとの地名つけたる戦艦を失ひしとき国敗れたり


 ここでわが短歌の師匠である小池光について簡単に紹介しておこう。
昭和22年宮城県生まれ、東北大学理学部修士課程終了、以来ずっと浦和工業高校教師。
「短歌人」編集人。今年、茂吉賞(『滴滴集』)、迢空賞(『時のめぐりに』)をダブル受賞、現代歌人の最高峰のひとりになりつつある。娘さん二人、猫好き。今年は、高校一年生の担任で、つい最近恒例のクラス合宿で伊豆山中に泊まり体力の限界を感じたという。「短歌人」の歌会で彼が出てくると、批評が俄然精彩を帯びて面白くなる。なによりも言葉遣いとユーモアに惹かれるのである。