天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鴨来る

黒揚羽と彼岸花

 横浜本牧三渓園に遊ぶ。台風十七号が千葉県の沖を北上しつつあり、反れていったとはいえ、名残の風が強い。三渓園は、生糸貿易で財をなした原三渓富太郎の元邸宅で、敷地は約五万三千坪あるという。金にあかせて京都、鎌倉他から由緒ある建築物を移築した。自身でも茶室や草庵を建てて、文人墨客を呼んだ。明治三十九年(1906)に、この邸宅を一般に公開した。よって来年2006で百年になる。原家の旧宅は鶴翔閣として復元されている。延べ床面積950平米、藁葺木造建築の大邸宅である。


        刀傷の身代り灯篭藤袴
        池の面のわが身にみとれ酔芙蓉
        台風の名残りをあそぶ烏かな
        鴨七羽芦刈舟に居眠れる
        赤に黒揚羽の垂るる彼岸花
        松籟に萩の花散る池の端
        松籟に蓮の実のとぶ裏葉かな
        左目のかすみゆくなりねこじやらし


   秀吉の愛用せしとふ瓢箪文手水鉢あり青松の影
   わたり來し鴨の九羽が浮かびたり野分かすめて濁りたる池
   身をかがめ芦刈舟の縁に立つ鴨の七羽を秋風が吹く
   わたり來しはるけき空を思ふらむ鴨の憩へる芦刈小舟
   丈高き蓮の裏葉のしらじらと野分の後の風になびけり
   丈高き茎立ちならぶ池の面に蓮の実がとぶ松籟の空