短歌人・横浜歌会九月
気になった歌とコメントを書いておく。
題詠は「わたしの秋」。
洗濯機のまはる渦からたちのぼるわたしの秋がひろがりてゆく
高澤志帆
*洗濯機と秋の取り合わせがポイントだが、どんな秋か読者はとまどう。秋の替わりに「春」にするとささやかな夢と希望を無理なく想像できるのだが。
丹波産の松茸よこめに眺めつつわたしの秋はふるさとの芋
金沢早苗
*結句のふるさとがどこか知りたくなる。負け惜しみを匂わすなら「川越の芋」とか、具体的に入れる手がある。
水引草の花ちりぢりに指し示すわがとまどひの秋の思ひを
川井怜子
*相聞歌ととればわかりやすい。古風になるが、貴公子から恋文をもらってとまどっている人妻の歌と読むのである。水引草と書いて「みづひき」とルビをふって読ませるとよい。
次は自由詠、二首をとりあげる。
浄土までと言はば浄土のあるごとくたましひ這へり秋は濡れゐて
若林のぶ
*「土」「たましひ」「這う」「秋」「濡れる」といった言葉の並びから墓場を想像してしまう。浄土とは死んで墓に入ることとしみじみ思っているこの秋だ。
ぬひぐるみ爆弾の降るアフガンの拾ふなよそれはともだちぢやない
高澤志帆
*内容はまことに残虐で身の毛もよだつが、うまい歌である。三句目の「の」で軽く言いさして切れる。