サーカスの美少女
連休二日目だが、雨模様であり、どこへも行く気がしない。買い物に付き合っただけで、ごろ寝して読みかけの雑誌を読んだが、久しぶりにめずらしい俳句に出会った。『俳壇』十月号に掲載された、松倉ゆずるという人の特別作品百句「一馬力」である。現代に似合わず懐かしい情景がリアリティをもって詠まれている。いくつか揚げておこう。
紙風船つけば匂へる実母散
寝ても言ふ隣まで来し稲熱(いもち)病
電球はねぢり消すもの虫の闇
足踏みの音の疲れし脱穀機
義士の日や鉱石ラジオの浪花節
徐州へと麦生を行くかわが鹿毛は
サーカスの美少女いづこ秋祭
大吹雪家路の手綱馬まかせ
興行にきた田舎芝居の一行の中で、学齢期にある子役の少女が、わずかの期間小学校の授業に参加することがあったが、その少女に淡い恋心を抱いたものである。芝居小屋の裏口まで覗きにいったような夢のような記憶がある。