天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海棠

天水盤

 連休最終日も雨もよいになった。鎌倉の大町を歩く。大巧寺のむらさきしきぶ、今日始めて気づいて立ち寄った蛇苦止(じゃくし)堂、妙本寺の海棠、ぼたもち寺では捕獲されたアライグマ、八雲神社の栗鼠、安養院の宝篋印塔、安国論寺ではほととぎす、本覚寺の散り残る百日紅 などをみてきた。
 鎌倉のいくつかの寺に残る名木は、年を経るにつれその樹勢が衰えていくようだ。特に海棠の木にその印象が強く、妙本寺の海棠など最たるものではないか。
 蛇苦止(じゃくし)堂とは奇妙でなにかリアルな感じの面白い名前だが、鎌倉における源氏や北条一族の骨肉相食む宿業と罪障消滅を祈願した石柱がある。NHKの「義経」をみるまでもなく、これからおこるであろう北朝鮮金王朝の後継者争いに、現代までも続く人間の消滅せざる宿業に暗澹となる。

         天水盤くさりを伝ふ秋の雨
         秋雨や親子のせくる人力車
         秋ともし罪障消滅蛇苦止堂
         松籟に黄葉ちるや比企ヶ谷
         参道を荘厳したり金木犀
         黄蝶舞ふぼたもち寺の門前に
         秋ふかむぼたもち寺のアライグマ
         秋風や囚はれの身のアライグマ
         栗鼠啼くや銀杏落つる稲荷屋根
         ほととぎす安国論の碑が読めず
         

   海棠の花に黙して座りゐき妻獲りあひし秀雄と中也
   墓石のなべて傾く裏庭に鎌倉しのぶわが靴の跡
   張り出せる大枝伐りて生き残る樹齢七百年羅漢槇
   風化せる細身の宝篋印塔は五郎入道正宗の墓