天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紫紺野牡丹

紫紺野牡丹

 今日は夕方六時から、短歌人横浜歌会。昼間は、雨が降りそうなので、いつものコースを歩いた。
つまり極楽寺から裏山に登り、長谷大仏、光則寺、長谷寺と回る。

       おしろいや風化に白き石地蔵
       舞ふ鳶を下に見てゆく谷戸の秋
       梢よりハングライダー銀杏散る
       大仏の背にする山のもみぢかな
       大仏の罅もたふとし山紅葉
       黄落の庭に栗鼠啼く木立かな
       つはぶきの葉に山茶花のひとつ乗る
       山茶花や生餌を待てる女郎蜘蛛
       長谷寺の十月桜軒を越ゆ
       写経する親子三人藤袴
       椨の木の洞は住みよし石蕗の花
       秋ふかみ紫紺野牡丹石に映ゆ

   裏山に土牢ありと矢印の庭に群れ咲くトレニアの花
  

 歌会では、今回の題詠は「食」。気に入った歌二首。
 「お前では話にならん」の〈おまへ〉なるわれ食ひしばり支配人呼ぶ
                      高澤志帆
  *三、四句がポイント。食ひしばりは当然「歯」についていう。
   題詠と言わずとも通る歌。

 喰らふとき〈しはわせ〉と言ふなにか斯う似非幸せによごれはじめる
                      川井怜子
  *初句が少しドギツく響くが、あとはうまく言い果せている。

わが歌は、
 なにごとか起こるを期して入りゆけり食事喫茶の「鎌倉夫人」
  *下句の四文字二箇所は特に気にならない。
   鎌倉夫人が効いてよい、と好評であった。