天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

今日をにれがむ

 日帰り出張で姫路までを往復し、深夜に帰宅した。新幹線車中ではずっと「短歌人」十一月号を読んだ。特集・猫と短歌はなかなか面白い。いつもながら、小池光の文章には感心する。ユーモアがあり切れがよいのだ。
 明日になってしまった、もう寝よう。


   壁の中にケイタイかくる女あり 人驚かすだまし写し絵
   北斎はHOKUSAIとあり国際派画家として立つこの新世紀
   のこる世をここに過ごさばやすからむ光おだしき浜名湖の秋
   頻繁にトイレに立てば嫌はるる新幹線の「のぞみ」A席
   窓外の闇を流るる秋の灯に今日をにれがみにがき汗かく
   窓外の闇に映れるわが顔に愛想尽きたりカーテンを引く
   ケイタイを見つつしゆくは一本のバナナ握れる猿にかも似る
   所在無き秋の夜更けをながむれば駅のホームに煙草が点る

         とる者もなく柿熟るる船場
         闇深き窓外をとぶ秋灯
         疲れたる目に突き刺さる秋ともし
         パソコンに劇画呼び出す秋の暮
         酒に酔ひ猿にかも似る夜半の秋