天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

言葉の生まれる現場

 雨、風などの言葉はいつどのように生まれたのだろう。山中智恵子のよく知られた歌にあるように。
  三輪山の背後より不可思議の月立てりはじめに月と呼びしひとはや


当たり前だが、雨、風などは万葉集古事記の歌にも出てくる。初めに音だけの言葉があり、後から象形文字として漢字がつけられた。さらに雨にも風にも種類によっていろいろな名前がつけられた。今の季節なら、しぐれ(二十種はある)、颪(十七種はある)など。手元に、詩人・高橋順子の文章、佐藤秀明の写真という著作で、『雨の名前』『風の名前』という二冊の楽しい本がある。文字通り、四季折々のさまざまな雨や風が、短歌、俳句など織り交ぜて紹介されている。実際に出会うには地方に行かねばならない種類も多い。そんな出会いの旅ができたらと夢みる本なのである。
 さきほど見たビデオ録画の番組に
         ときめきて落葉の道に君を待つ
という俳句らしき求愛の手紙文がでてきた。気障だが、何気なくでてくると、お!お!と思わず感心してしまう。


         紅葉にいでたつ巫女の袴かな
         巫女のゆく下駄の音きくもみぢかな