天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小春日

円覚寺の冬櫻

 鳥インフルエンザが入ってきたら役に立たないが、今年も念のためにインフルエンザの予防注射をしに医院にいった。今日は疲れる運動は避けなければならないので、北鎌倉中心に歩いてきた。円覚寺東慶寺建長寺海蔵寺寿福寺などに紅葉を探ったが、まだ色づきが浅い。


        谷戸くれば朝日に匂ふ冬櫻
        烏瓜聖観音のお膝元
        冬きたる五祖録提唱円覚寺
        小春日の踏み石つたふにじり口
        床下に熊手のばすも落葉掻
        門前の朝日まぶしむ石蕗の花
        白壁や銀杏もみぢの朝日影
        小春日やねむたき山羊は身じろがず
        厳めしき瑞賢墳墓冬に入る
        松籟や枯葉ちりくる谷戸の墓碑
        龍棲める海東法窟小春かな
        浮き出づる肋骨さむし苦行像
        小春日の三門下の法話かな
        桔梗の花ふみまがふ谷戸の庭
        枯尾花烏線路に小石置く
    
   肩に刺すインフルエンザの注射針ちくりともせず効き目
   うたがふ


   亭々と欅もみぢの揺らぎ立つ梢まぶしき朝の木漏れ日
   半僧坊にのぼらむとするわき道のゆく手はばめるスズメバチ
   の巣


   四十雀山鳩ありく日だまりにアララギの木は淡き影曳く
   うき出づる骨もすがしき苦行像海東法窟に釈迦をはします
   天井の龍が見下ろす法堂(はつとう)の土間に据ゑたる釈迦
   苦行像


 今日発行の『俳句四季』十二月号を買ったら、伊丹三樹彦選の秀逸に二句入っていた。夏休みに行った長良川と大井川でそれぞれ作った句である。
        山蔭をかがり火出づる鵜飼かな
        川中の木立にふるや蝉しぐれ