天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

絵葉書

 月が替わった。靖国神社拝殿の社頭掲示も替わった。プリントには、次の明治天皇御製が書かれてある。「をりにふれたる」の前書き。
  いさをたてし いくさの人を みるにまづ 帰らずなりし 
  身を思ふかな

遺書には「奇麗な絵葉書ありがとう」という題がつけてある。昭和十九年三月に、ビルマで戦死した陸軍伍長のものである。享年二十五歳。文面から察するに、妹とその級友たちが住所は書かずに、絵葉書をビルマ戦線の兄に送り、それに対する礼状を妹宛に出したものらしい。伍長は、それらの美しい日本の絵葉書を戦友や班長に見せて、感激を分かち合った。

  教養のなさを恥ぢざる文面にまごころあふれ陸軍伍長
  妹のおほくの友の絵葉書をもらひてうれしビルマ戦線
  戦地にもバナナ、お菓子はあるといへ優るものなき絵葉書の束
  美しき絵葉書、写真受け取りて戦地の友に班長に見す
  戦場に絵葉書抱きて散りにけむ独立自動車大隊の兵
  絵葉書をあまたもらひし礼状が遺書とはなりぬビルマの戦地


今日はの境内は、さすがにワイシャツ姿では寒い。

        笹鳴の石擦るごとし藪の中
        はれやかに銀杏落ち葉の並木道