天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

早春の三渓園

湯茶接待

 横浜本牧三渓園にいった。えらく寒い。今日から観梅会が始まり一ヶ月間続く。園内では餅つきをやり、踊りを披露していた。またいくつかの茶室では茶会が開催されて、和服姿の女性たちが行き交っていた。さらに三渓記念館では、ゆかりの雛人形が展示されていた。



  松ヶ枝を吹く風もなき池の辺の軒端にゆらぐ春の水紋
  二羽の鵜に春風ふけり池の面の杭に舫へる芦刈小舟
  白鷺のあゆみ見つめて動かざる黒猫の背のまさに平たく
  白鷺の足が掻き出す池底のいのちはかなし嘴の先

        水鳥の嘴ならす水面かな
        春浅き茶席にぎはふ月華殿
        薄氷の下に色あり命あり
        盆梅の光かそけきよしず張
        餅つきて女踊りて春立ちぬ
        漢きて榾火みつむる湯呑かな
        舟縁に二羽の鵜立てり春うらら


          <雛人形展から>
  ぬばたまの黒髪かかる雪の肌御所人形のつくねなりけり
  公達の蹴鞠に花のちりかかり御簾の内より見る女房たち
  最上段屏風背にして畏まる憂ひひめたる男雛と女雛
  羽ひろげ胡蝶の舞の稚児雛がかざすかたみの桜、橘
  横笛(おうてき)に篳篥(ひちりき)、太鼓、笛、鞨鼓(かっこ)
  五人囃子はみな美少年


        みなまろき一刀彫の吉野雛
        鶴きたる青き松ヶ枝御所人形
        芥子雛のやんごとなきは牙首(げくび)かな
        公達の蹴鞠に花のちりかかる