天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

夢の浮橋

 塚本邦雄『源氏五十四帖題詠』最後の「夢浮橋」の巻に対する歌は、
  夢よ夢ゆめのまたゆめなかぞらに絶えたる橋も虹のかけはし


である。読者は当然のことながら定家の次の名歌と比較したくなる。
  春の夜の夢のうきはしとだえして嶺に別るるよこぐものそら


 この名歌は、源氏物語「夢浮橋」の巻を面影にして解釈するのが定説だが、塚本の意見は、完璧な形而上学という。出典のあれこれより一首の中でその言葉がいかに生かされたかが問題であり、橋はもとより此岸と彼岸をつなぐルートの象徴であった、とする。
 塚本の歌こそ源氏物語「夢浮橋」に寄りかかっているのだ。定家の歌は、一首独立しての鑑賞に耐えられる故に、はるかに優れているといえる。


     通勤途上にあまたの烏騒ぐを聞きて
  月曜日分別ゴミを出したればカアカア烏が情報交換