現代の定家(8)
塚本邦雄には馬の歌も大変多い。「馬を洗はば」の名歌を含む次のような例をあげることができる。
騎兵らがかつて目もくれずに過ぎた薔薇苑でその遺児ら密会
わが過去にすさまじきものはこびきて豪雨の中にうなだるる馬
乳房その他に溺れてわれら在る夜をすなはち立ちてねむれり馬は
馬と男をのみ信じつつ潸然(さんぜん)と今日水のうへ行く夏まつり
ウルキューレにがき油のごとく満ち馬はその鬣より死せり
馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人恋はば人あやむるこころ
すさまじきもの霜月のうまごやし、うまのあしがた、
うまのすずくさ
飼葉桶その枯草に百合一茎 馬もほほゑむことこそあらめ
年たけて週休四日になりぬれば死への軟着陸とさびしむ