天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

現代の定家(9)

 弱った! 理解の手がかりが得られない。『青き菊の主題』のことである。各章のはじめに瞬篇小説があり、その後に短歌一連が載っている構成で、七章からなる。平安の昔から『伊勢物語』のような歌物語はあるが、それとは全く趣が違う。
 瞬篇小説の内容と歌の内容とがどう関係するのか、読者にはさっぱりわからない。小説の味わいは、三島由紀夫調を感じさせて高踏的ではあるが、よくわかる。しかし、歌の一首一首の立場不明。まるで独りよがりなのだ。小説の主人公なり登場人物の立場で詠んだわけでもなさそう。歌と歌の間にも関係はなさそう。弟子の島内景二さんの解題によると、塚本は「韻文と散文の交響」を求めたということだが、具体的な鑑賞がないのでやはり理解不能