天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花狂い

銘木の枝垂櫻

 小田原一夜城の桜も満開であろうとJR早川駅からタクシーに乗り、石垣山に駆けつけたが閑散としている。早川駅に降りた時、人出がないので変だと思ったが、案の定、櫻は花の盛りを過ぎていた。昨年と同じ過ちをしでかしてしまった。石垣山から双眼鏡で長興山を見てみると銘木・枝垂れ櫻はまだ散ってはいない。十日前に出かけたときはまだ蕾であったが。
 石垣山の一夜城跡から関白林道を抜け入生田に出て、長興山に登る。地面には花が散っていないので、今まさに満開である。


     一夜城二の丸跡の花辛夷
     葉桜の空うるはしき四月かな
     ちりのこる櫻かなしむ一夜城
     鳥啼ける天守台跡著莪の花
     ぴようぴようと何鳥啼くや著莪の花
     穴太流野面石積み著莪の花
     葉桜やさくら狂ひを嗤はるる
     琴の音に花弁おとす辛夷かな
     遊行寺はさくら縁日屋台かな


  スジャータとふ乳製品のかぐはしも仏陀に乳をささげし娘
  一夜城跡に佇み風をきくさくらの散りしのちのしづけさ
  西曲輪跡の広場に十数本黒松たちて春風を聞く
  一夜城さくら狂ひもきはまりて散り残りたる花をかなしむ
  スダジイの古木に鬱のありにけり山櫻ちる関白林道
  咲き残る石垣山の葉桜にミツバチがとぶ朝影のなか
  いつきても「樹齢三百二十年以上」とありて櫻しだるる