天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

レトリック2

 黙説あるいは中断と呼ばれる技法がある。ものを言いさすこと。何かを言いかけて、途中でやめてしまう、そしてあとは言わなくてもわかってもらえるだろう・・・と、いちおう期待することある、と佐藤信夫の著書にある。
 和歌、短歌でも言いさしの形は出てくる。
  荒磯(ありそ)越す波は恐(かしこ)ししかすがに海の玉藻の憎くは
  あらずして                 『万葉集
  おもふどち春の山辺に打ちむれてそこともいはぬ旅寝してしが
                        『古今和歌集

現代歌人で極端にこのレトリックを用いたのが藤原龍一郎である。
  メトロへの階降りざまに突風を浴びる悲運を詩の哀愁を    
  オレンジ・カード千円分の逃亡をさもなくばわが詩的悲傷を  
  文学の超越性の衰弱を螺旋思考の終りに置けば