天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

レトリック1

 以前読んだときにはエラク難しい、退屈な本だと思っていたが、今回読み返してみて名著ではないか、と感じている。それは、講談社学術文庫佐藤信夫著の『レトリック感覚』および『レトリック認識』の二冊である。今後しばらく喩の技法について考えていきたい。
 今日は、換喩について。ふたつのものとの隣接性にもとづく比喩である。次の蕪村の俳句が典型例。
      春雨やものがたり行く蓑と傘     蕪村

蓑と傘でそれらを被るふたりの人間を代表させている。換喩は日常の会話でもでてくる喩法である。


 昼の散歩で今日はじめて気づいたのだが、靖国神社神池の傍にある献木の櫻の幹に、俳句が掲げられていた。ずいぶん前からあったはずだが。
     軍服は襤褸と成りゆく異国の雁   小川千賀
  (シベリアの風雪は酷しかった)という注釈も書かれていた。


  「軍服は襤褸に成りゆく」句が懸かり今さかりなる献木の花
  シベリアの風雪に耐へ詠みし句か雁見送りし襤褸の軍服