売り言葉に買い言葉、という言い方がある。対比という修辞法である。ふたつの観念のあいだに対照関係を設けて、両者がたがいに引き立てあうようにすることばのあや。ことわざや格言に対比表現が多い。口あたりのいいわりには、心に印象を残すことがない、という欠点がある。
馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人恋はば人あやむるこころ
塚本邦雄
馬/人、洗はば/恋はば、冱ゆる/あやむる といった対比である。
わが歌から、
カチャーシー手の振る舞ひにあらはるる男をどりと女をどりと
下句の、男をどりと/女をどりと に工夫したつもり。ただ、調子に流れてしまう危険あり。