天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

横浜開港資料館

玉楠

 今日は久しぶりに横浜開港資料館に行った。中庭の玉楠の木に惹かれるのである。日米和親条約締結の場面を見ていた木の子供である。関東大震災で焼けてしまったが、根株から、今の木が芽吹いた。玉楠は、タブノキの老樹の木理が巻雲紋を呈するものをいう。「外国人カメラマンが撮った幕末ニッポン」という写真展示の最中であった。フェリーチェ・ベアトの作品が主体。当たり前だが、幕末明治と現代とでは、横浜の風景がまるで違って見える。想像もつかない変り様である。箱根の杉並木や江の島の情景だけが昔の面影を残している。


     噴水のしぶきの風や芥子の花
     薔薇咲くや正午知らする氷川丸

  玉楠のふるき根株に記憶せり和親条約交渉の日々
  開国を迫りて波濤越えきたりサスケハナ号ポーハタン号
  開国を迫りて海をわたり来し嘉永六年のペリー艦隊
  村人のめづらしがれる黒船に沿岸駈くる早馬の武士
  日本の主権およばぬ境界に「居留地界」の標石立てり
  条約の締結までを波荒きうなさか超えしポーハタン号
  黒船と恐れられにし容姿なれ蒸気外輪船の模型は
  幕末の街角に立ち鈴鳴らす「新聞小政」の印半纏
  写真には侍、人足、万歳師、六部、浪人、甘酒売りも
  赤い靴はいてた子の像背景に虞美人草と芥子の花咲く
  足元に靄ながれくる公園に唇あはす虞美人の花
  「赤い靴」大正十年発表の野口雨情本居長世
  「赤い靴」像の見つむる海原を外国航路の白き船くる
  ランドマークタワー先端見えざりき雲ながれくる横浜の空